人はみな、かつては子どもだった、とはよく言われることです。でも、最近の中学生は私たちのころとは違う、といういい方もよく聞きます。子どもらしい、という言葉がありますが、「子どもらしくない子ども」もよく話題に上ります。私たちが当たり前のように語る言葉を、あらためて考えてみると、人によって異なる理解をしていることもめずらしくありません。そして、このことは個人的な意見の相違だけでなく、その社会がどのようにとらえるのか、あるいは、時代がどこに向かおうとしているのかによっても、大きく変わってくるように思います。私たちが「子ども」という言葉で語ることの中に、どのようなことが織り込まれているのか、それが時代や社会・文化の諸相の中でどのように異なっているのか。子どもや家族、あるいは学校に関する人々の観念を、時間的、空間的な比較から分析していくことを、私の研究課題としています。
ゼミのみなさんにも自分の関心にそって多様なテーマを選んでもらっています。ただし、テーマは多様でも、研究は丁寧にすすめてもらいたいと考えています。ゼミ生には、選んだテーマは、研究史上どのような位置にあり、その問いを解明することにどのような意義があるのか、そして、その解明のためには、どのような方法をとり、どのような資料が必要になるのか、一歩一歩検討してもらっています。ゼミの所属のみなさんは、こういった地味な作業をこつこつと続けるなかで、研究を形にしていくことに挑戦しています。